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- 2016年の今月のこの一冊
今月のこの一冊 ことばの学校 厳選の230冊から1冊を紹介します!


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『はっぱのおうち』
征矢清/作 林明子/絵
972円 1985年初版 
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生き物・自然・時間

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ほのぼの

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表現がこまやか

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さちちゃんは庭で1人、花を摘んでいたところ、ぽつりぽつりと雨がふってきます。茂みのかくれがで雨やどりをします。すると、雨やどりをする仲間が1匹ずつやってきます。かまきり、もんしろちょう、こがねむし、てんとうむし……

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ふつう雨やどりは、じっとして退屈なものですね。けれど、この作品では雨やどりという時間を、友だちがたずねて来るように生き物たちが次々にやって来るという動きがある楽しい時間として描いています。
子どもが退屈に思う時間を楽しい時間に変えて見せてくれるのです。
物事の見方や捉え方を新しく教えてくれるという読書が持っている力を素直に感じる作品です。雨がふった日に読む絵本にぜひおすすめします。

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『なぞの転校生』
眉村卓/作 緒方剛志/絵
626円 1967年初版 
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成長・SF(サイエンス・フィクション)

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不思議?でも感動!

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淡い

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広一の中学校に転校生がやって来ます。
美形で秀才、スポーツ万能の好青年の典夫。
しかし、転校生の典夫は異様な行動を見せ始めます。
雨を怖がったり、運動会のリレーの本番の最中なのにジェット機が上を通過すると、コースをそれて、突然、校庭から逃げ出したりします。
それも典夫だけでなく、典夫と一緒の日に転校してきた美形で秀才、スポーツ万能の4人もリレーの最中にもかかわらず、逃げ出してしまいます。
新聞記事でわかったのは、このような謎の天才少年少女が実はたくさんいるらしいのです。
彼らは、典夫が転校して来たのと同じタイミングで他の町にもやってきたようなのでした。 
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大ヒット映画『君の名は。』との共通ポイントがある作品ですので、ご紹介します。
・タイムスリップ
・学園もの
・クライシス(危機)
・恋愛
映像化も何度もされています。
ストーリーの面白さには、共通するポイントがあるようですね。

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『くちぶえ番長』
重松清/作 塚本やすし/絵
497円
2007年初版 
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友情・別れ・思い出

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いつまでも たえることなく 友だちでいよう ♪

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小学4年生のツヨシのクラスに、一輪車とくちぶえの上手な転校生の女の子がやって来た。それが「くちぶえ番長」こと川村マコト。小さい頃に父親を亡くしたマコトは、強くて、やさしく、頼もしい。そんな、ツヨシとマコトの1年間の友情物語。

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ぐいぐい読ませるストーリー。登場人物のキャラクターのおもしろさ。エピローグやプロローグを駆使した構成(再読するとおもしろい仕組みに気づきます)。人情の機微に通じた心理描写。読みやすいけど、とても深い!重松清の作品に触れるたびにつくづく感じます。

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『だいじょうぶ だいじょうぶ』
いとうひろし/作・絵
1,080円
1995年初版 
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信頼

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「だいじょうぶ だいじょうぶ」と声に出したくなる

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「僕」はおじいちゃんと散歩に出かける中で、世界のすばらしさ、そして、こわさも知ります。
そのたびにおじいちゃんが「だいじょうぶ だいじょうぶ」と声をかけて励ましてくれるのでした。 
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この絵本の最後は、大きくなった主人公が、病気でふせるおじいちゃんの手を今度は自分がにぎり「だいじょうぶ だいじょうぶ」と声をかける場面で終わります。
自分を励ましてくれた言葉を今度は、おじいちゃんにかけるこの主人公は、きっと他人に向かっても同じような行動をとる人となるでしょう。まさにことばとこころを育む一冊です。

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『おくのほそ道』
松尾芭蕉(1644-1694) /作
1702年初版 
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旅と人生

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旅に出たい!

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旅に生きた俳人松尾芭蕉の、約5ヶ月にわたる奥羽・北陸の旅日記。

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旅に生きた俳人松尾芭蕉の、約5ヶ月にわたる奥羽・北陸の旅日記。

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旅の日記ではありますが、もちろんその土地、その土地で詠まれる俳句が、鮮烈です。
行く春や 鳥なき 魚の 目はなみだ (東京都 千住)
夏草や つわものどもが 夢のあと (岩手県 平泉)
しずかさや 岩にしみいる せみの声 (山形県 山形市)
さみだれを あつめて早し もがみ川 (山形県 新庄市)
荒海や 佐渡に 横たふ 天の河 (新潟県 出雲崎)
いずれもたった17文字の中に、物の見方を変えさせる詩情、感受性があふれていますね。

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『ふたごの星』
宮沢賢治/作 あきやまただし/絵
1,080円 2005年初版 
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友愛

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宙に浮いているよう

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ふしぎ、あわい色

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天の川にすむふたごの星がさそりの星に大からすの星がけんかをしたところを助けたり、ほうき星にさそわれて天の川を旅します。大くじら、うみへび、海の王さまに出会います。

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作品の中に出てくる「星めぐりの歌」がとても有名です。
朝の連続テレビ小説「あまちゃん」でも使われていました。
また、代表作の『銀河鉄道の夜』の作品内でこの『ふたごの星』の話をする場面が出てきます。
お子さんが、大きくなって自分で『銀河鉄道の夜』を手にして読んだとき、この『ふたごの星』のことを思い出してくれたらいいですね。

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『くるくるくるよ おすしがくるよ』
川北亮司/作 山村浩二/絵
1,404円 2011年初版 
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ユーモア

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思わず口ずさみたくなる

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ぎょろりとした目にふっくらした体型のキャラクター

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回転ずしのお店に入った4人家族。注文すると次から次にすしネタのキャラクターが皿にのって登場します。リズムのよい言葉遊びにのせてすしネタたちは自己紹介をします。

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ハマチのにいさん ちょっとおまち はちまきまいて どこいくよみち ふりむき かわいい おちょぼぐち
たとえば、ハマチを注文するとこんなフレーズにのせて、はっぴにうちわのハマチのにいさんが、ちょうちんにかこまれて皿にのって4人家族の前に登場します。
ことばあそびはリズムがいのち!
言葉の組み合わせのテンポにのせて、どんどん声に出して、読んでみたくなる1冊です。

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『科学の考え方・学び方』
池内了/著
907円 1996年初版 
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科学の考え方と、科学のこれまでの歴史と、これからの課題がわかる一冊。

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考えが整理できる!

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「2 科学の考え方」の章が、この本ならではの読みごたえある部分です。
日ごろの思考力・判断力のアップグレードにうってつけの内容です。 
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科学の考え方とは…
・毎日少しずつ変化していることに気づき、根気よく観察を続ける中で、「規則性」を見出すこと。
・「数値化・定量化」することで、異なった人の異なった場所での観測結果を客観的に比較・整理できること。
・自分流の仮説が、最終的には「変換に対して不変」な原理として採用できるか分析すること。

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『思考の整理学』
外山滋比古/著
562円 1983年初版 
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思考のアイデア集

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なるほど!

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読書技術やアイデアを生み出す方法、情報の整理の仕方などの知的活動ついてのエッセイ集

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出版から30年をかけて、100万部突破のロングセラー。
入試問題にもたくさん出ています。
2000年台になってから帯に以下の文面がついて、再び火がつきました。・東大・京大で1番読まれた本
・もっと若い時に読んでいれば…そう思わずにはいられませんでした。 
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「A読み(すでに知っていることの再認)をしていたのが、突如としてB読み(未知のことの理解)のできるようになるわけがない。移行の橋わたしがなくてはならない。それに役立つのが文学作品である。国語教育において、文学作品の読解が不可欠な理由がそこにある。」(「既知・未知」より)

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『真田幸村 大阪の陣悲運の武将』
砂田弘/作 高田勲/絵
670円(税別) 1992年初版 
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歴史・人生

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人の運命を感じる

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荒々しい、スケッチ風

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今から450年前、日本は戦国時代。全国で武将たちがはげしく争っていました。
今の長野県である信濃(しなの)の国の小大名真田家は生き残りをかけて必死でした。
小大名でありながら真田幸村と父昌幸は、知恵を使って天下人である徳川家康をさんざん苦しめます。 
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親しみやすいユーモラスなたとえ話がこの筆者独特です。
「わずか半年のあいだに、昌幸は武田勝頼、織田信長、北条氏政、徳川家康と、なんと四人も主人をかえたのでした。いまでいうと、サラリーマンが、半年間に四回も会社をかわったということになります。」
「幸村は、真田の旗、よろい、かぶとなどすべて赤一色に統一しました。これを「真田の赤備え」といいます。いまでいうと、さしずめ広島カープの赤ヘル軍団というところです。」
どうぞ、歴史の面白さに触れるきっかけにしてください。

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『ハッピーノート』
草野たき/作 ともこエヴァーソン/絵
1400円(税別) 2005年初版 
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自分に素直になること

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自分も変わらなきゃ!

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こまやか、あたたかい

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小学6年生の聡子(さとこ)は中学受験をするため、塾に通っています。
学校では聡子はグループの友だちにうんざりしています。
ホンネをかくしてつき合っているのです。塾ではそんな人間関係を気にせず、勉強に打ち込んでさえいればいいと思っています。聡子には秘密があるのでした。塾の帰りに立ちよるドーナツショップで、同じ塾のボーイフレンドの霧島(きりしま)くんと待ち合わせて、いっしょに勉強することです。
霧島くんは塾では声をかけてくれないけれど、ドーナツショップではとてもやさしくしてくれます。聡子は霧島くんにもホンネをかくしているのです。塾でも霧島くんに仲よくしてほしい、友だちの輪に入れてほしいというホンネです。聡子は、ホンネを言えない自分のいらいらを家では両親にぶつけてしまいます。
ところが、デパートの試食販売の仕事を始めたお母さんをこっそり見に行ってから、聡子は変わり始めます。
大きな声を出すのが苦手なはずのお母さんが、声をはりあげて、元気に仕事をしている様子を見て、自分も本心を言えるよう変わろうと思うのでした。 
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心理学で「アサーション(主張)」という考え方があります。
思っていることをためこんで言えなかったり、がまんしてしまうタイプの人が相手の気持ちを考えながらも、自分の気持ちや主張を受け入れられるように表現していくものです。「ハッピーノート」を読んでいたらまさに、このアサーションの実践だと思いました。

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『そんごくう』
呉承恩/作 小暮正夫/文 中嶋潔/絵
864円 1988年初版(16世紀に成立) 
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ぼうけん・ファンタジー

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わくわく・おどろく

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やわらかい線・ひょうきんな表情

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高い山から落ちてきた石のかたまりからサルが生まれてきました。そのサルは、その後サルの王さまになります。それから500年もたったころ、そのサルの王さまは不老不死をのぞんで、仙人の弟子になりたくさんの術をおぼえます。
これがそんごくうです。そんごくうは世界を回り、天の国まで行って、大あばれをします。ところが、そんごくうは、おしゃかさまに罰として500年間、五ぎょう山の岩に閉じこめられてしまいます。ようやく許されたそんごくうは、三ぞうほうしを助けて旅をします。旅の途中に次から次に現れる妖怪たちをやっつけて大活躍をするのです。 
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けたはずれな数字がたくさん出てきて、話のスケールの大きさを感じます。
①そんごくうは、重さが8トンもある自由に伸び縮みする「にょいぼう」をふりまわします。
②10万8000里(地球を10周できる距離)を一瞬で飛べる雲の乗り物「きんとうん」をあやつります。
③3000年、6000年、9000年に一度実る不老不死の実を食べてしまいます。また、そんごくうは、不思議な術をつかいます。
①体の毛を抜くとその毛一本一本が小さなそんごくうになり、敵と戦います。
②敵がいる場所に小さな虫になって入り込んだりもできるのです。時間や大きさの目まぐるしく変わる世界が物語にどんどん引き込みます。




























